先日、英単語のテスト勉強が不十分なクラスで少し思い出話をした。
その生徒は中1で塾にやってきた。
今も生徒たちが使っている英単語帳から最初の40問を課題として出し、目の前に座らせて1時間後にテストをしてみた。
3点…3点!!
仕方がないから、また1時間ほど時間を与えて再度テストをしてみる。
9点…きゅ…う…呆気にとられて言葉も出ない。
その生徒は1日かかっても半分も英単語を覚えられなかった。
音とアルファベットが全くマッチしていない。
完全にローマ字な彼はbaseballをバセバ11と覚えていた。
来る日も来る日も覚えられなくて泣いていた。
そんな彼が去年、関西の有名私立大学に合格した。
彼とは中1から高3までずっと一緒にやってきた。
大学受験の英単語40個をものの30分で覚えるくらい成長していた。
と、彼は本当によく頑張ったのだが、なにも彼の美談を伝えたいわけではない。
私が伝えたいのは彼のお母さんの話。
中1の男の子が毎日泣いて帰ってくる。
塾で何をしてきたかと問えば、「英単語」のみ。
私が親なら果たして続けさせるだろうか。
いや、無理だろうな。
でもそのお母さんは続けさせた。
どんな厳しい指導をしようとも、どんな理不尽な課題を出そうとも続けさせた。
定期的な懇談では、「お願いしますねぇ」と微笑んでいらっしゃった。
大学に合格して、今まで続けてくれた感謝の気持ちを伝えたとき、お母さんは「先生は家族ですから」と言った。
決して家族ではないのだ。
家族にはなれない。
でも、家族の次くらいには子どもたちの将来を考えている。
目の前の成績は大切ですよ。
成績を上げるのが我々の仕事ですから。
でも、その子がどんな子になってほしいかを一緒に考えて歩んでいける関係を知ってしまったから。
やっぱりそれを目指したいと思う。