その子は中1の冬に体験に来た。
ガチガチに緊張して、
こちらの発問にも目をカッと開いて口を一文字。
今思えば、極度の人見知りだったのだろう。
次に会ったのは中3の夏休み前。
あれから一年半たって。
遅い、遅いよ。
もともと長距離走が得意なタイプではない。
コツコツやるのが苦手で、
テスト数日前にガッとやってという感じの子だった。
そんな子が、
3年生の夏休みは朝から晩まで、
それこそ食事と睡眠以外は全ての時間を勉強に注いだ。
一人では甘えてしまうというから、
中3生用指定席(私のすぐ前の席)で勉強した。
学校にいる時間よりも、
家にいる時間よりも私の前にいた。
秋になっても、
冬になっても、
勢いは止まらなかった。
入った時の偏差値は10近く伸びた。
でも、
第一志望の公立校には落ちた。
その子は大泣きしながら、
「先生ごめんなさい」
と言った。
私も、
「ごめんな」
と言った。
つい先日、
その子が同志社大学に合格した。
指定校推薦での合格。
今度はコツコツやったんだね。
あの、涙で「先生ごめんなさい」と言った彼女の姿が、
何度も何度も夢の中に出てきた彼女の姿が、
ようやく消えた。
もちろん今まで担当した生徒はみんな覚えている。
こんな関係が生徒一人ひとりと存在する。
『湊』もそんな塾にしたいと思う。